開館記念展Ⅲのオンラインチケット販売開始日は、近日中にお知らせにてご案内いたします。
大名茶人として知られる松江藩七代藩主・松平治郷(はるさと/号・不昧(ふまい)、 1751~1818)は、財政の緊迫した松江藩を藩政改革で立て直し、その余力で茶器の大蒐集(しゅうしゅう)をおこないました。若き日に茶の湯に対する批判ももらしていた不昧は、既成の茶の湯をこえて新しい茶の湯をきりひらくため、独自の茶の湯道具の研究へと進みます。こうした名物研究を背景に不昧は確かな鑑識眼で名品を数多く蒐集し、約900点におよぶ茶道具を集めました。そのなかには今日、国宝や重要文化財に指定されているものも多くみられます。現代に通じる美の基準を定めた不昧が所持した茶道具は、松平家の蔵帳といえる『雲州蔵帳(うんしゅうくらちょう)』も詳細に記され、後年の蒐集家たちに尊重、高く評価されました。
不昧はまた、いくつもの茶室を建て茶会を催しました。とくに隠居後を過ごした品川大崎の松江藩下屋敷は、11の茶室が点在する大茶苑でした。東都随一の名園と評判を呼びましたが、黒船来航の際に品川沖警備の軍用地となり、取り壊されています。その後80年を経た昭和12年(1937)に畠山一清(いっせい/号・即翁(そくおう)、1881~1971)が白金猿町(現・白金台2丁目)の土地を入手して造園したのが当美術館のある地で、不昧の「大崎庭苑」の近隣に位置しています。庭園の中に茶室を設けて夢の茶苑をつくりあげた不昧の茶の湯は、近代の財界人たちの数寄者に大きな影響を与えました。不昧は庭園づくりにおいても大きな影響を与えました。不昧は庭園づくりにおいても偉大な先駆者だったといえるでしょう。
本展では、不昧が、そして雲州蔵帳の名器を多数所持した近代最後の数寄者 畠山即翁が描いた夢に迫ります。
前期:4月12日(土)–5月11日(日)
後期:5月14日(水)–6月15日(日)
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